• 2009.03.21 Saturday
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「フェルモス家、ね……」

 アクロポリスシティ、アップタウンの中央よりやや北側にある建物の一室で、エミルの女性が眉をひそめながら呟いた。
 短く切り揃えられた赤い髪に手をやりながら、椅子に深く座りなおし――小さくため息をついた。

「何かあったのか?」

 ため息を聞きつけたのか、部屋の隅に置かれたソファーに座っていたドミニオンの男が声を掛けた。

「イストー岬にあるフェルモス家の屋敷が全焼した、ってだけなんだけどね」

 女性は、かけられた声に応えながらデスクの最下段の引き出しを開け、数多のファイルが並べられている中から手探りで一つのファイルを引き出し、机の上へと置いた。

「……それは?」

「四年前、フェルモス家で起きた事件の資料よ」

 そう言いながら、ファイルは開かずにその端を指で軽く叩きながら、女性は続けた。

「一応解決した事件の、ね」




「四年前、フェルモス家の屋敷を訪れた一人の剣士が一家のほぼ全員を斬殺した……と、一言で説明できる事件なの」

 手渡された資料に目を通す青髪のドミニオンである部下に聞かせてやる。

「その剣士は?」

「事件の数ヵ月後にノーザン地方で行方不明になった、という報告が上がってるわ」

 男の疑問に淡々と答え、だから一応解決した事件なのだ、と続けて言った。

「……今回の事件、行方不明になった剣士が再び現れた、って事なら話は簡単なんだけどね」

「違うのか?」

「えぇ、前回の犯人はエミル族の剣士。今回はドミニオンなのよね」

 言いながら、頭の中では別のことを考える。
 何故、二度もフェルモス家が襲われたのか。
 何故、二度ともあの少年――レッツェルは生き延びる事ができたのか。

「前回との相違点を挙げるなら、結界が張られていた事と――」

 だからすぐに気付く事ができなかったわけではないが、あの異質な力がなければ最後まで気付かなかった可能性は十分にある。
 もっとも、気付いて使い魔をやったものの、それも間に合ったとは言い難いのだ。
 できた事といえば、屋敷を襲撃したと思われる人物の姿を見ることができたぐらいで、その能力はまだ分かっていないのだから。

「――後、今回は何らかの魔道具を使った形跡がある、ぐらい、で……」

 そこまで言って、ようやく思い出した。
 フェルモス家。
 あの家がどんな家業を代々受け継いできたのかを。
 それが、どのように応用されてきたのかを。
 そうか、それが――

「……ルーナ?」

 現在の名前を呼ばれ、はっと我に返る。

「……レグ」

 目の前に立つ青い髪のドミニオンの名前を呼び、視線を合わせてから、一言。

「仕事よ」



「どんな手段を使ったのかは分からないけど、標的は私の使い魔の目を潜り抜けてあの屋敷を抜け出した」

 一旦屋敷の中へと引っ込んだかと思えば、次に捕捉したときには屋敷から10キロほど離れた場所を歩いていた。
 姿を消して移動したのか、レッツェルのように地中を移動したのか……もしくは、瞬間移動でもしたのだろうか。
 想像はできるものの、どれが正解かはわからない。

「私も後から行く。だから――」

「標的の足止め、だな」

 私が最後まで言うまでもなく、レグゼスは意図を汲み取って答えた。
 それに軽く頷いて答え、

「道案内は外に用意したから、あまり無茶はしないように」

「了解だ」

 私の声を背に、レグゼスはこの部屋を出て行った。
 標的がどのルートを通るのか見当はついている。
 もしそれが的外れだったとしても、決して追いつけない事はない距離に、レグゼスが居る。
 問題があるとしたら、あの屋敷を抜け出した方法で通り抜けられる事だが――気付かれないように監視しておけば、その心配もないように思える。

「……さて」

 そのあたりはなるようにしかならないだろう。
 確実に通るポイントで抑えても良いが、周囲への被害を考えるとそれも難しい。
 今回は交渉がメインなのだから、周囲に被害を及ぼすような行為はできる限り控えたいところだ。

「まずはドミニオンの利益代表のところね」

 それから――あの子にも声を掛けておくことにしましょうか。



  • 2009.03.21 Saturday 21:36
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