• 2009.03.21 Saturday
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 こうして、蒼と碧は表舞台へと姿を現した。
 そして最後の一色――紅が姿を現す時、本当の継承戦が始まる。



「くそ、くそ、くそが――ッ」

 小さく暗い洞穴の中――正確に言うならば、大地を変化させる事で作ったスペースで、レッツェルは声を荒げていた。

「何なんだよ、何なんだよ、アレは!!」

 脳裏に描き出されるのは、先ほど会った『蒼の後継者』フィランの姿。
 そして、その手に持った蒼い剣が砕け散る光景と、撒き散らされた炎の異質な力。
 何度考えてもアレは異常であり、異質でしかない。

「なんで、どうして――」

 どうして、『蒼の後継者』の持つ武器は俺の《碧緑の杖》よりも優れているのだろうか。
 思えば、テーブルクロスの鎖を切り裂いたナイフも特殊な武器なのではないだろうか。
 レッツェルが強度を検査した時、あれは確かに通常の鎖と同じ強度があったのだから。
 分からない。
 レッツェルには分からない。
 武具を、物質を変化させて戦う己と、特殊なアイテムを使って戦う『蒼の後継者』との差が。
 どちらも、同じように異質な武具を使って戦っているはずなのに。
 手数だけならば、レッツェルのほうが圧倒的に多いはずなのに。

「蒼の、後継者……」

 あいつは、そう名乗っていた。

「碧の後継者……」

 あいつは、レッツェルの事をそう呼んだ。
 その二つの言葉から推測できるのは、書物の中にあったある戦いの事だけだ。

「継承戦争、か」

 蒼、紅、碧。
 三色を継ぐものが、互いの持つ武具を奪い合い、最終的に三つの武具をそろえる事が目的の戦い。
 恐らく、あの『蒼の後継者』はレッツェルの持つ《碧緑の杖》を奪いに来たのだろう。
 それなら、考えるべきは――

「どうやって、三つの武具を集めるか、か」

 そして、レッツェルは思考する。
 『蒼の後継者』から、そして未だ見ぬ『紅の後継者』から、どのようにして武具を奪うかを――



「マスター」

「ん?」

 イースの呼びかけに足を止め、フィランは応えた。
 周囲にはすでに草原ではなく、木々の生い茂る山道へと入っていた。
 当然の事ながら――道は、ない。

「手を、抜きましたね?」

「否定はしないな」

 イースの言葉にフィランは、頷いて応えた。
 手を抜いた。
 それは、『碧の後継者』との戦いの事を指しているのだろう。
 あの戦いは、たしかに手を抜いていたと言われても仕方ない。
 なにせ、戦いの最中に使うべきではないような武器も使ったのだから。

「これを、戦ってる時に使うとは思わなかったな」

 小さく笑いながらそう言って取り出したのは、テーブルクロスの鎖を切り裂いたナイフだった。

「何なのですか、それは」

 その正体を知らないイースの質問にフィランは、

「布を裁断するためのナイフ」

 と、答えたのだった。



 アップタウンの南東。
 飛空庭の発着が盛んに行われている場所で、キョロキョロしながら飛んでいる、一人のタイタニアの女の子が居た。
 輝くような金色の髪に、似たような色の瞳を持つ少女は、何かを探すようにフラフラと周囲を飛びまわっていた。
 やがて、目的の人物――いや、格好からすると男性だろう――を見かけたのか、その人物の元へと一直線に飛んでいく。
 相手も、近づいてくる女の子に気付いたのか、女の子の方へと近づいてきた。
 お互いの顔がようやく確認できる距離になって、女の子は男性の胸目掛けて勢いよく飛び込んだ。

「わっ」

 男性は、女の子をしっかりと抱きとめ、勢いを逃がすようにそのまま少し後退した。

「やぁ、リズ。無事に来れたんだね」

「えぇ、貴方も……会いたかった」

 互いに相手の背中へと手を回してしっかりと抱き合う二人は、傍から見ると恋人同士以外の何者でもなく――また、それは事実だった。
 女の子――リズと、男性とはタイタニア界に居た頃から交際を続けており、男性が試練のためにエミル界に降りてからも、利益代表の手を通して手紙を交換しながらも交際を続けていたのだ。
 そして、男性の試練が始まってから3年。
 特例として試練が免除されていた彼女も、本人の強い希望で試練を受ける事になり――今日、エミル界へと降り立ったのだった。

「今日から、私たちは一緒に生活できるのね」

 タイタニア界では、実家の仕来りによって同じ屋根の下で寝る事も叶わなかった二人だが、エミル界に出てしまえば、家からの束縛はないも同然である。

「そうだな。でも――」

 俺は冒険者だから、という男性の口に人差し指を当て、にこやかに微笑み――

「私の槍の腕前、知ってるでしょ?」

 と、リズは言った。
 その言葉に、男性はしばし呆然とし――笑い声を上げながら、言った。

「たしかに、リズの言うとおりだ」

 そう、その男性は知っていた。
 リズと呼ばれている女の子――リィズ・ルナフレアは、稀代の槍使いである事を。




 その日――フィランが、レッツェルの屋敷を襲撃した翌日。
 このエミルの世界に、蒼、紅、碧の後継者が揃い、継承戦が――始まった。

  • 2009.03.21 Saturday 02:46
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